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ドールシープとオーロラ撮影 再挑戦

先日、いつもより長かった冬のシーズンが終わりました。

通常はオーロラシーズンは4月の中旬で終わりますが、今年は5月の初旬までオーロラ&キャンプのガイドをしていました。(ゴールデンウィークにオーロラが見えるイメージはなかなかありませんが、実際には見えます。)

今回はゴールデンウィーク後の5月の2週目を狙って、オーロラとドールシープの撮影に出かけてきました。

dall with kluane lake
<湖の氷が端から割れ始める今の季節。シープも冬毛が抜け落ちる頃。>

いつも通りクルアニ国立公園へ向けて運転し、山に到着してからドールシープがいるかどうかを確認します。

天敵から身を守るため、山や崖の上に住んでいるドールシープ。

双眼鏡とスコープを使って、その姿を確認します。

dall on the cliff
<山高くに住むドールシープ。普段は白い点にしか見えない。>

オーロラ予報がかなりよかった5月12日。

しかも白夜に近く日が長いので、普段は夜には真っ黒になってしまうドールシープが残照でうっすらと浮かびあがるはずです。

オーロラ出現時の夜にドールシープの姿を撮影するため今まで何度か挑戦してきましたが、成功したのはたったの一回。

それでも納得のいく写真ではなかったため、それ以来もう一度きちんと撮ってみたいとずっと思っていました。

白夜に近いこの季節にオーロラが出るチャンスは滅多になく、気温も比較的高くて夜中に山でじっとしていても厳冬期ほど寒くありません。

そういった意味では滅多にない千載一遇のチャンスです。

今回は前夜に到着し、ドールシープの動きを確認。

そして12日は丸1日かけてドールシープの群れを追っていきました。

dall sleeping
<山の上で一休みするドールシープ>

山や崖を上るので、なるべく背負うものを小さくしないと体力が持ちませんし、動くドールシープについていけません。

ただ夜間は0度前後と寒くなり、日中はプラス15度となる為、夜の撮影の為の防寒具も全て持っていかなければいけません。

それに加えて水やスナック、オーロラ撮影の為の三脚やこの為に買った高感度カメラ&レンズ、安全用の衛星携帯などを加えていくと、実際はかなり重くなってしまいます。

気合いを入れて全部もっていきましたが、肝心のドールシープが動きがいつもより激しく、なかなか落ち着いてくれません。

白夜が迫っている時期の為、夜中の0時ぐらいまでは日が残っています。

冬の撮影では夕方の5、6時ぐらいからは暗くなるため、ドールシープは寝る為に座ってじっとしています。

日中は時折じっとしてくれるシープの群れでしたが、夜になるとまた草を食べるために動き出してしまいました。

young dall
<若いドールシープ。草を食べては移動してゆく。>

dall broken lake
<割れる湖の氷。幾何学的な模様がおもしろい。山の上から眺めた、谷間の反対側の下にいる別のドールシープの群れ。>

結局朝から夜21時頃まで追いかけましたが、群れは山のさらに上まで行ってしまい追いつけず。

仕方なく下山する形となりました。

そして迎えた12日の夜。

予想通りオーロラは大爆発し、ドールシープがいるであろう山の後ろにもきれいに踊っていました。

expansive aurora
<クルアニ山脈の上で爆発するオーロラ>

ただいつも出る北向きの方角は明るすぎてあまりはっきりとしたオーロラは見えず。

仮に山の上に上っていても、ドールシープを北向きに撮っていれば、それなりの写真は撮れたはずです。

実際に出たオーロラは、予想に反して南側で爆発していました。

強い時に南に出るのはわかっていましたが、いつもと違う方角に出ていたのが更なる誤算でした。

普段ならこれだけのオーロラが、しかもこのようなシーズンの終わりのぎりぎりに出た形なら大喜びだったはず。

強烈なオーロラに興奮しながら、シープがいる山を横目に悶々とした気持ち。

オーロラとシープを狙っていた身とすれば、少し複雑な気分です。。。

aurora over kluane range
<南側に出ていたオーロラ>

諦めきれずに次の日もすることにし、トラックの中で就寝。

次の日は朝から生まれたばかりの赤ん坊の写真を撮るため、山を朝からひと上り。

まだ生まれて日が浅い為か、母親たちはこちらに気づくと避けてどこかに行ってしまいます。

curious ewe
<まだお腹の大きな出産前のシープ。こちらがじっとしていると近寄ってきました。>

sheep oyako1
<親子で歩く崖の上。以前撮影した写真です。>

spring lamb next to mom
<寒い春の日の親子。こちらも以前撮影した写真。>

一度下山して、オーロラ予報を確認するために、携帯電波の入る隣村まで行きました。
(ユーコンのほとんどは携帯は圏外で通じません。その為に衛星携帯やスポットなどの衛星機器を安全の為に持ち歩いています。)

太陽風や磁場などのデータをみながら、その日もオーロラが強いことを確認。

前日の反省を生かして荷物や機材を減らし、登山開始時間も遅らせて午後7時頃から上りました。

その結果か、今回は群れともうまく合流できて共に夜中まで行動することに成功。

夜中の0時を過ぎたころ、10頭前後いたシープの中から3頭ほどがゆっくりと座りました。

方角は昨日オーロラがきれいに出ていた南側方面。

そして背景には湖がきれいに広がっています。

dall sheep night
<小さな3つの白い点となったシープ。あとはオーロラが空に出てくれるのみ。。。>

夜間はこちらが少しでも動くと、ドールシープはナーバスになりどこかへ行ってしまいます。

じっと息をひそめて、オーロラが出るのをひたすら待ちました。

強風が吹いており、湖には砂嵐がずっと俟っています。

体感温度はマイナスとなり、軽量化した格好では体もすぐに冷えてきます。

0時半、1時、1時半、2時、2時半。。。待てども待てどもオーロラは出てきません。

そして朝3時頃。

風が止んだと共に、たくさんの蚊が出てきました。

顔の周りに飛んできてこちらを刺してくる蚊の群れ。

ドールシープも刺されているのか、座りながらも体をひねったり、頭を動かしたりしています。

同時に3頭いたシープが1頭、また1頭と立ち上がり、別の場所へと移動していってしまいました。。。

night sheep
<夜中に立ち上がりだした別方角の群れ。蚊の発生のためか、移動をしながら草を食べ始める。>

この時点で撮影は終了。

今回もドールシープとオーロラは幻に終わり、夜中の山を降りていきました。

すぐには寝付けず、車をホワイトホースへ向けて走らせました。

今回もまた失敗に終わった撮影ですが、いつかはきっと成功するのでしょう。

頭の中のイメージが現実化した夜、最高の一枚が撮れるはずです。

ただ何故こんなにこのイメージにこだわっている自分がいるのか?

その写真にどんな意味があるのか??

カメラなど持たず、ひたすら普通に厳しい自然で生きているドールシープ。。。

夜中山の上でオーロラの出現を待ちながら、そんなこと考えてしまっていました。

2004年にユーコンに来てからしばらく時間が経ちました。

最初は極北の自然を見て圧倒されて写真を撮っていましたが、今は憧れていた極北が自分が住む土地となっています。

最初の圧倒感よりも、もっとその自然の仕組みを理解したい気持ちへと変わっています。

同時にどのようにここの自然とつきあっていくかを改めて問われているような気がします。

その中で撮る写真や写真を超えた自然全般に対する気持ちも少しずつ変わってくるのでしょう。

そんなことを考えているとだんだんと眠くなってきます。

車を止めて、シュラフの中に潜ったのは朝の4時過ぎ。

薄暗い中、春鳥が既に鳴き始めていました。。。

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プロフィール

上村 知弘       (うえむら ともひろ)

Author:上村 知弘       (うえむら ともひろ)
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<プロフィール>

1978年生まれ、神戸育ち

高校時代より海外の文化に興味を持ち始め、大学時代にアメリカへ留学。これを機に、ヨーロッパ、インド、東南アジアなどをバックパックで周り、世界の文化、自然への興味を募らせていく。

卒業後、極地冒険家大場満朗冒険学校、動物保護団体NPOアークで働いた後、2004年カナダへ渡航。

カナダ極北ユーコン、アラスカにて、夢であった原野での旅を繰り返しながら、自然の中での生活、自然写真へのめりこんでゆく。

ユーコンにて3年暮らし、オーロラ、アウトドアガイドを努めた後、2007年帰国し丹頂の里、北海道道東鶴居村へ3年間移住。

2011年5月よりカナダ ユーコン準州へ戻る。
永住権を取得し、ユーコンでの生活を再開。

カナダ人の妻とユーコン準州ホワイトホースの森の中にて、17頭の犬とゲル(モンゴルの伝統的テント住居)暮らし中。

2012年ガイドビジネスの立ち上げ。
www.tntnaturecon.com

2014年 初写真集「Dall Sheep」の出版
www.seiseisha.net/dallsheep.html

極北の自然、犬ぞり、生活、原野の旅を楽しんでいます。

 SHEEP illustration
    Dall Sheep © t.m.

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